わかりやすい日本語で、来日する外国人観光客をもてなそう。この実践のためには、日本語のネイティブ・スピーカーが普段用いる日本語をやさしく直す必要があります。そして、その技法を最も持ち合わせているのが、日本語学習者と日々、教室で接している日本語の教員であることは間違いありません。
プロの日本語教員は、外国人に対して日本語を教えることで機関や個人から報酬を得るのが主たるビジネスモデルです。日本語をわかりやすく言い換えるのは、そのモデルが要求する技法の一部にしかすぎません。けれども、その一部を実践したり、一般の人たちに伝えたりすることで、新たな収入が生まれる可能性があります。これは「日本人に対する日本語教育」の試行であり、自分たちが既に持っている技法の一部を報酬に変える、いわゆるアンバンドリングが可能になります。
観光客の個々の言語に対応するよりも、わかりやすい日本語でコミュニケーションを取る。この考え方は、いわば媒介語を用いた学習者の母語別の対応よりも、直接法を用いた全学習者への対応に見立てることができます。増加する外国人ツーリストとのコミュニケーションに対して、日本語を使えばいいんだ、ただしわかりやすい日本語が必要だ、この認識が国レベルで広まれば、日本語教師はやさしい日本語の指導者(インストラクター)として活躍することができます。
本研究会では指導者の研修も計画しており、多くの日本語教師の皆さんがこの考え方に賛同し、参加してくださることを待っております。
(荒川洋平)