本当に偶然ではありますが、本研究会の立ち上げの翌日に、岩波新書から一橋大学庵功雄教授がお書きになった「やさしい日本語–多文化共生社会へ」が発売されました。私も早速書店で購入しました。
期待通り、やさしい日本語に関する概要と、多文化共生においていかに重要かということを理解する上には最適の入門書でした。本研究会にご関心をもっていただける方すべてにご推薦します。
特に、何度も出てくる「英語は共通言語にはなりえない」という点は、アジアからの旅行客が大半である訪日観光客を対象としても同じことが当てはまる、もっとも重要な指摘です。
さらに「日本の地域社会に共通言語ができるとすれば、その候補になり得るのは<やさしい日本語>だけ」「自然に任せた場合、もっとも普通に考えられるのは、いかなる共通言語も生まれない、つまり地域社会の外国人住民と日本人住民は永遠に会話ができない」(pp42)という指摘も、「インバウンド観光での地方再生を目指すなら、受け入れ側の言語は<やさしい日本語>しか候補になりえない」と言い換えられるのではないかと感じました。
本プロジェクトにおける「やさしい日本語」は、最終的に国内の多文化共生にも資することも目的としています。しかしことが言語である以上、普及しなければ死語・消滅言語と同じになるでしょう。
やさしい日本語ツーリズム研究会は、「ツーリズム」という「経済」的視点、そして海外の「趣味的学習者」との「親善」の視点から、やさしい日本語のことを日本人に幅広く関心を知ってもらおう、外国人との触れ合い成功体験をしてもらおう、と思っています。
きっかけはなんであれ、まずは普及させ、外国人とのコミュニケーションの喜びを覚えてもらえれば、それが隣の外国人にも使えることにだれでも気がつくでしょう。私たちの活動は、国内多文化共生を加速化させるための活動である、ということもアピールしていきたいです。
(吉開章)