2016年3月の言語文化教育研究学会での書籍直販会で、くろしお出版の「外国語教育は英語だけでいいのか~グローバル社会は多言語だ!~」という書籍が目に留まり、4月発売のところ先行予約して早々に入手しました。
この書籍は多数の先生方の共著ですが、一貫したものは「英語一本やりの外国語教育への警鐘」です。ヨーロッパ、中東、東アジア、そして英語圏も含めた諸国で、英語以外の外国語教育をいかに推し進めているか、振り返って日本での危機的状況を訴えかけるものです。
その中でも第13章の「高校生の意識-英語だけでは物足りない-(長谷川由紀子)」には目を見張るものがありました。結果をかいつまんで紹介します。
英語以外の言語を履修している高校生グループ(O)と、英語のみを履修している高校生グループ(E)を比較すると(かっこ内の数字は論文での設問番号)、
(2)仕方なく学んでいる:O=10%以下、E=30%程度
(5)当該言語の学習は難しい:O=90%程度、E=70%以上
(6)当該言語の学習は楽しい:O=80%近く、E=50%程度
(7)当該言語を学ぶことで世界が広がると思う :O=90%近く、E=75%程度
(8)当該言語で当該言語圏の文化理解が深まった:O=80%近く、E=50%未満
(18)世界共通語は英語なので自分も勉強しておかないとあとで困る:O=90%近く、E=75%程度
(20)外国語学習は英語だけで十分だ:O=20%未満、E=30%程度
(21)英語以外の外国語を学習することは進学希望者にとって不利だ:O=5%以下、E=10%程度
このように、英語以外の外国語を学習している高校生は、難しくも主体的に楽しく学んでおり、受験科目にないとしても進学希望に不利になるということもないと考えているようです。また、英語だけ学習している高校生も含めて、「外国語学習は英語だけで十分だ」と考えているのは少数派である、という点も注目すべきでしょう。
東アジアの国地域だけでなく、日本語パートナーズが派遣されているASEAN諸国でも、日本語は「英語以外の外国語」として学習できる高校が多数あります。(6)にあるように、英語以外の言語学習は楽しく、英語はあまり楽しくない、という気持ちはおそらく世界共通なのではないでしょうか。
当研究会は、日本人の英語一辺倒の固定観念に対しても挑戦していきます。この書籍で、日本の若者の中にもいい芽があることを知りました。日本の将来も捨てたものではないようです。
(吉開章)