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「やさしい英語」と「やさしい日本語」(日本言語政策学会)

6月17、18日関西大学千里山キャンパスにおいて日本言語政策学会(JALP)第19回研究大会が開催されました。大会2日目の第5分科会では、「観光接触場面におけるツーリスト・トーク:『やさしい英語』と『やさしい日本語』」というテーマでパネルディスカッションが行われました。

 

このパネルは、本研究会代表加藤の主旨に同意してくださった4人の卓越した研究者から構成されました。15:30から17:20までという遅い時間の設定でしたが、最後まで多くの観客が熱心にパネルに参加してくれました。


一番目の発表は英語教育、ESPがご専門の藤田玲子氏(東海大学)で、観光地神奈川県大山で実施されたアンケート調査の結果をもとに「やさしい英語」というジャンルを知ることの必要性と、ツーリスト・トークの一つとしての「やさしい英語」の重要性について指摘されました。


二番目の庵功雄氏(一橋大学)は、まず<やさしい日本語>についての解説をされたあと、観光接触場面での<やさしい日本語>使用のマインドが多文化共生への土壌を形成する可能性がある点について述べられました。


次に森直人氏(株式会社電通、法政大学大学院政策創造研究科)が、柳川市での「やさしい日本語」を使用したおもてなしの現場報告とともに、「やさしい日本語」の今後の可能性や観光接触場面における言語使用のあり方について発表されました。


そして最後に宇佐美まゆみ氏(国立国語研究所)が、ポライトネス理論についての詳しい説明のあと、観光接触場面での「やさしい言語」を使用した「おもてなし」が、ポライトネス理論からどのように解釈されるのか、そしてそれを踏まえて今後の観光接触場面での言語使用はどうあるべきかについて説明されました。


いずれの発表も密度が高く、新しいこの分野にとって非常に示唆に富む素晴らしい内容ばかりでした。会場からの質疑応答も含め、1時間50分のパネルディスカッションがあっという間に過ぎたように感じました。このパネルでの議論が、この分野のさらなる研究の発火点となってくれることを期待します。

 

(加藤 好崇)