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ご当地が一切出ない自治体PR?福岡県柳川市「さげもんガールズ」の画期性

福岡県柳川市から生まれた「さげもんガールズ」。第2期メンバーはオリジナル曲によるミュージックビデオとして、11月13日に登場しました。かわいい振り付けやスリリングなワンカット・ワンテイク手法が映像の魅力です。

「さげもんガールズ」は柳川の伝統文化である「さげもん」というつるし雛(ひな)をイメージしたガールズユニットであり、今回の楽曲は柳川出身の詩人北原白秋「あめふり」をモチーフとしています。

このビデオは、自治体や地元企業が協賛したいわゆる「ご当地PRビデオ」と大きく一線を画しています。

<自治体PRなのに、全編台湾ロケ。ご当地柳川は一切出てこない>

このビデオは全編「千と千尋の神隠し」で有名になった台湾の九份(きゅうふん)で撮影されています。ご当地柳川は一切登場しません。この点について「さげもんガールズ」仕掛け人(株)T&Eの肥後岳志プロデューサーは、

柳川市に来る観光客の多くが台湾人であり、市の観光プロモーションもあり台湾のとの絆が強まっていた
台湾から柳川に来てもらうだけでなく、柳川・日本の人たちも台湾に観光に行ってほしいという意図もあった

と話しています。

<中国語字幕に、ひらがなをそのまま使用>

ビデオでは、台湾で使われている繁体中国語で、縦書きの字幕が表示されています。さらに英語の単語は英語で、そして「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん」などの擬音は、そのままひらがなで表示しています。この点についても肥後プロデューサーにお聞きしたところ、次のように答えてくれました。

縦書きの字幕は、中国映画っぽい雰囲気を意識

擬音語を翻訳しようとしたが、無理だった

台湾には日本語がわかる人も多く、北原白秋の「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらん」をそのまま伝えるには、ひらがなが一番だと考えた

<柳川市のインバウンド戦略>

柳川市事業の「やさしい日本語ツーリズム」と「さげもんガールズ」の担当部署は同じであり、市やフィルムコミッション、観光協会などの方々の協力とリーダーシップで絶妙な連動が図られています。

昨年、福岡の台湾代表をお招きしたやさしい日本語ツーリズムキックオフミーティングでは、柳川市長が「台湾から来てもらいたいという一方的な関係でなく、交流人口を増やすことが大事」と言っていました。また、台湾では看板や商品名などにひらがなを入れることも多く、字幕は日本語を愛する台湾の方々へのメッセージとも感じられます。なにより「ご当地から全世界に(多言語で)発信」ではなく、「対象国地域を絞ったプロモーション」に踏み切ったことは、柳川市の英断でしょう。

日本の地方を訪れるインバウンド客の多くは韓国・台湾・香港からのリピーター客。そして彼らの多くは日本語を勉強したことがある。柳川市は今年2月13日、東呉大学の日本語教員郭獻尹博士を柳川観光大使に任命しています。

この「さげもんガールズ」の手法を韓国・香港にも展開し、現地でロケをすれば、柳川をおとずれるインバウンド客のほとんどに対する強力なプロモーションになるではないでしょうか。

(やさしい日本語ツーリズム研究会 事務局長 吉開 章)