「趣味で日本語を学習する人たち」の存在を信じてください。

研究会が発表した台湾学習者数調査は、日本語教育関係者に波紋が広がっているようです。

【緊急提言】自律学習者への対応を急ごう(台湾の調査を受けて)

この調査は、1000サンプルを実際の台湾の性年齢別構成比に合わせ、各クラスターで統計的に有意なサンプル数を確保して行ったものです。同じ質問の内容であれば、2000サンプルでも3000サンプルでもほぼ同様の結果がでるはずです。

この統計については、日本人の英語学習と比較して論じられているものが多いようです。一般の日本人にとって外国語学習といえば英語なので、しかたがないところです。

しかしながら、台湾における日本語学習は、ほとんどの場合「趣味で学習している」と言っても過言ではありません。日本人にとって英語は趣味の学習でしょうか?義務教育・大学受験が終わったら、英語の勉強がなくなってほっとしているような人が、自分の英語の体験をもとに、台湾人の日本語を例えても意味がないことは明らかでしょう。

台湾人にとって第1外国語は、日本人と同様英語です。英語は大学入試にも直結しており、そのプレッシャーは日本人と同等以上かもしれません。

一方、台湾人にとって日本語学習は、出世・給与など、経済的な理由で必要なものではありません。いわば趣味として自発的に学習しています。台湾には日本語を選択できる高校もあるようですが、それでも自発的に選択できますし、また今回の調査は18歳以上であり、高校生は含まれません。大学で日本語を専攻・副専攻、単位を取得するといっても、社会の要請ではなくすべて自発的な選択です。

台湾人の日本語学習を論じる上で、日本人の英語学習と比較することは、多くの場合でうまくいきません。むしろ、NHK教育番組やドラマで中国語や韓国語などを勉強し、その地に観光に行って実践しようとしている日本人を想像してみると、よくわかるはずです。

日本における中国語・韓国語学習者は楽しくのびのびと学習していますが、その学習人口はさほど大きくありません。しかし台湾で趣味的に日本語学習者はとんでもない人数がいることが、今回の調査で明らかになったわけです。

まずは、台湾だけでなく「趣味で日本語を勉強する人がいる」ということを信じることから始めましょう。

(吉開章)

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