【Q&A】「やさしい日本語」は、不自然だ!

はい、その通りです。「やさしい日本語」は日本人同士で使うにはきわめて不自然な話し方です。しかし、そんな表現はいくらでもあります。

家族間で敬語を使ったらどうでしょうか? 不自然ですね。
目上の方にタメ口で話したらどうでしょうか? 不自然、というより失礼です。

同様に、「やさしい日本語」を日本人相手につかえば、不自然なのは当然です。これは、「やさしい日本語」について一番最初に理解しなければいけないことかもしれません。

では日本語学習者にとって「やさしい日本語」は自然なのでしょうか

日本語学習者は一般に教科書を使って文型を積み上げながら勉強しています。その教科書は、日本人が使う英語の教科書の構成とあまり変わりません。中級にさしかかるまでの日本語教科書の表現は、「やさしい日本語」そのものです。

したがって、日本語学習者にとっては、自然・不自然というよりは、「慣れている」表現と言えるでしょう。

みなさんが旅行先で慣れない英会話をするときに、相手が外国人でも慣れている表現をしてくれる相手だったら、ちょっとほっとするのではないでしょうか。少なくとも失礼な人とは思わないでしょう。

「やさしい日本語」はまだ一般的な存在ではありません。人工的な言い回しとも言えるかもしれません。しかし 一橋大学庵功雄教授は著書「やさしい日本語–多文化共生社会へ」で、

自然に任せた場合、もっとも普通に考えられるのは、いかなる共通言語も生まれない、つまり地域社会の外国人住民と日本人住民は永遠に会話ができない。

と言っています。私は、「自然な日本語のままではだめだ」そして「積極的に行動しないとだめだ」の2点を指摘していると解釈しています。年間2000万人規模の訪日観光客、そして待ったなしの国内多文化共生の状況において、今こそ日本人側が日本語を調整して話す運動を推進していく時期なのではないでしょうか。

それでも「やっぱり自然じゃない!気持ち悪い」と言いたい方には、今一度「はい、その通りです」とお答えしておきます。

(吉開章)

YNTSquarelogo-300x300



gtag('config', 'UA-82645677-1');

タグ : 2016年