国際交流基金・電通の共同日本語学習者調査結果の読み方補足。

12月20日に発表した国際交流基金・電通共同台湾・香港・韓国日本語学習者調査は、日本語教育関係者から驚きの目で見られているようです。これまでにない調査ですので、調査設計・実施した立場から、結果を読む上での留意点をまとめてみました(今後書き足していきます)。

台湾・香港・韓国の日本語学習者は推定800万人規模(国際交流基金・電通共同調査発表)

<手法について>

1)この調査は各国地域の18-64歳男女を対象としています。高校生以下で日本語を学習している人、65歳以上で日本語を話す人など、各国地域で多数いますが、その数字は含まれません。また台湾は中国語(繁体字)、香港は広東語、韓国は韓国語で質問をしていますので、これらの言葉を解しない人(例えば香港における海外からの労働者)などは入っていません。

2)本調査は調査会社が保有する回答協力者(パネル)を対象に実施したWebアンケートであり、世論調査のような、地域性も反映した層化抽出法などは使用していません。回答サンプルにおいては都市部に偏っている可能性はあります

3)学習経験率が各地域とも高いため、本調査では性年齢別の学習経験者を母集団とした各種分析が実現できていますが、一部母集団サンプルが30未満の層は参考値としています。学習経験率が低い国地域で人口推計と各種分析まで同時に行うにはサンプル数を大幅に増やす必要があり、全世界の国地域で実施するのは事実上不可能といえます。

4)学習方法については、台湾では独学についてネットやテレビなどの回答を分けていません。

5)学習方法の「大学、短大、専門学校の専攻・第2外国語として」は、各国地域の教育制度に応じて多少翻訳を変えています。

<用語・定義について>

1)この調査における「現在日本語学習中」とは、回答者本人が「現在日本語を勉強している」と回答した人のことです。日本語学習者かどうかの基準を、教育者側ではなく本人の認識に置いたということです。

2)この調査における「少しでも日本語会話が可能」とは、「まあまあ/よく話せる」「少しだけ話せる」と答えた人のことです。それ以外の選択肢は「ほとんど話せない」「全く話せない」であり、どちらかといえば話せる側にいる、と答えた人の集合です。

3)この調査では、「独学」と「教育機関学習」は重複回答ができる設計になっています。「独学だけ」で学んだ人については、「独学(機関学習なし)」の数字(学習経験者を母集団に台湾で21.7%、香港で29.4%、韓国で33.5%)を見てください(PDFの10ページ目)。

4)この調査における「学習方法」は過去と現在を区別していません。過去独学だけの経験があり、現在は学校に通っている場合もあります。この調査では現在の独学者数や機関学習者の割合や人数は推定できません

<結果について>

1)「(18-64歳男女の)台湾人が3人集まれば少なくとも1人が少しでも日本語を話す確率が8割」は、「台湾人で少しでも日本語を話すと回答した割合が41.5%」と数学的に同値(一方が成立すれば他方も成立)です。前者の表現はインバウンドの視点で、旅行者グループ単位での日本語対応の可能性を評価するためのものですが、数学的には後者と同じことを言っています。この調査を活用される方々の視点に応じて、どちらの表現を採用してもらっても構いません。

<その他>

この調査結果の読み方に関してご質問があれば、a.yoshikai (アットマーク)dentsu.co.jp にお問い合わせいただければ、できる範囲でご回答します(回答をお約束するものではありません)。内容は(個人情報は抜いた形で)本ページ内に掲載することがありますので、あらかじめご了承ください。

調査レポート全体は以下から入手してください。

https://goo.gl/7QwlF5

(吉開章)

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